建築設計における消防協議の手順と留意点について解説

質問・疑問

消防との協議はどう進めたらいいの?
協議に際した準備はどうすれば?
消防協議の手順と留意点を知りたい!

今回はこんな疑問にお答えします。

結論

消防協議に際して十分な準備をして、打合せに臨みましょう。

消防局との協議は中々骨を折ります。
まだなれていない方はどう進めてよいかわからないですよね。
そこでこの記事では消防協議の手順や留意点についてご紹介します。

目次

消防協議とは何か?

消防協議とは

建築の設計業務には役所との協議がつきものです。
例えば都市計画法や水道法などにおいて、建築計画に問題がないかを各諸官庁と確認する作業です。

その中で、防災関連の確認業務は消防局との協議となります。
この確認業務を消防協議といいます。

消火設備等を含んだ防災計画は、その建築計画に大きく影響します。
仮に工事着工間近で消防計画に不備が発覚した場合は、大きな手戻りとなる恐れがあります。
そのため建築計画の初期段階から消防署と密に協議して、問題のない防災計画とまとめることが重要です。

消防協議の事前準備

消防協議の事前準備

消防協議に臨む前に事前準備が必要です。
情報が整理されていないと協議が円滑に進められません。
消防協議自体は計画の確認作業であり、あくまで本題は事前準備だと考えて差し支えありません。
可能な限り精度良い事前準備をまとめて消防協議に臨みましょう。

事前準備のポイント

  1. 建物条件を整理
  2. 関連法規を整理
  3. 消防設備のチェックリストを作成
  4. 問題点の洗い出しと対策の整理

建物条件を整理

まずは建物条件を整理してください。
建物の用途、延床面積、階数といった内容です。
これら情報によりどの消防設備が必要になるか決まります。

同じ敷地内に既存の建物があるか、その建物と渡り廊下で繋ぐか等も整理してください。
既存建物の有無によって、今回計画に必要な消防設備なども変わります。
加えてその既存建物にどのような消防設備が設置されているかも明確にする必要があります。
場合によっては、新築建物の影響により既存建物の消防設備の変更も発生します。

建物条件の項目例
  1. 建物用途
  2. 延床面積
  3. 階数
  4. その他
既存建物がある場合の項目例
  1. 既存建築情報
  2. 既存消防設備情報
  3. 今回計画との位置関係
  4. その他

消防関連法規を整理

今回建物に関連する法規を整理してください。
主に消防法と各市町村の火災予防条例が該当します。
消防法は全国共通ですが、この火災予防条例は各市町村によって記載内容が異なります。
必ずチェックするようにしてください。

原則的に火災予防条例は各市町村のホームページで閲覧できます。
ただし自治体によっては入手できない地域もあります。
その場合は消防協議時に確認する以外方法はありません。

  1. 消防法
  2. 各市町村の火災予防条例
  3. その他(例えば東京都でいうと事務審査基準を確認する必要があります。)

消防設備のチェックリストを作成

「1.建物条件を整理する」、「2.関連法規を整理する」からどの消防設備が必要かのチェックリストを作成してください。
各消防設備が必要な理由、不要な理由を明確にまとめてください。
例えば、

スプリンクラー設備: 必要 → 延床面積〇〇m2 >〇〇m2
消防排煙設備: 不要 → 必要用途に該当しないため

といった具合です。
ここで条件を明確にすると、消防局との協議がより円滑に進めることができます。
条件をまとめるうえで、建築消防adviceや消防・建築設備早見帖が役立ちますのでご活用ください。

問題点の洗い出しと対策の整理

「3.消防設備のチェックリストを作成する」の中で、設置を避けたい設備が出てくる場合があります。
例えばもともと想定していない設備設置の必要性が出てきた、といった具合です。
必要な設備は設置せざるを得ないですが、意外と回避する手段があったりします。
事前に問題点の洗い出しと対策の整理を行いましょう。

消防法は意外と柔軟と言うか、ある条件を満たした場合は設置を免除する、という考えがあります。
特に施行令32条の特例というものがあり、消防局長が問題ないと判断した場合は、一部の消防設備の設置が免れたりします。
その過去事例は、「建築消防advice」やインターネット検索で調べられます。
今回の懸念事項が過去事例に合致していないかなど、事前に問題の洗い出しと対策を整理しましょう。

消防協議について

消防協議について

事前準備が本題であり、消防協議に臨むだけです。
事前準備や問題点の洗い出しが必要十分にできていれば、基本的に消防協議自体は円滑に進みます。

事前準備のポイント

  1. アポイントを取る
  2. 協議を行う・議事録をまとめる
  3. 年度跨ぎには注意する

アポイントを取る

準備ができましたらいざ消防協議の実践です。
まずは消防へアポイントを取りましょう。
消防署はとても忙しい役所です。
担当者にアポイントを取れず、1週間以上協議を進められない、という事態も十分に起こりえます。
常に設計工程から逆算して、早めに協議のアポイントを取ることを心がけてください。

連絡先は建設地最寄りの消防署予防課になります。

消防水利など協議内容によっては警防課との協議にもなりますが、まずは予防課への連絡で問題ありません。
同じ市町村であっても建築する地区によって協議する消防署が異なる場合があります。
電話の際に住所と建築内容を伝えて、そちらの消防署との協議で良いか確認しましょう。

また予防課以外との協議も要するかについても確認して下さい。
例えば、予防課・警防課・危険物課との協議が必要となった場合、同時に各部署に確認を要する場合があります。
複数の部署と協議が必要になった際には、続けて各部署と打合せができるようにアポイントを取ることをおすすめします。

予防課は午後検査に出ているケースが多いので、原則午前中にアポイントを取るつもりで予定を組んでおいたほうが良いです。

協議を行う・議事録をまとめる

協議についてはここまで準備してきた内容を確認するだけです。

まずは準備編「1.建物条件を整理する」でまとめた建築条件を消防担当者に伝えましょう。
そして次に「3.消防設備のチェックリストを作成する」で作成したチェックリストに基づき、1つずつ項目を確認していきます。
手元に消防・建築設備早見帖を用意しておくと安心です。

わからないことや懸念事項は素直に消防担当者に質問しましょう。
人命関わる話ですので、問題点などを先送りにすることはNGです。
必要な設備を設計初期に明確にし、消防担当者と合意しましょう。

そのため協議が完了しましたら、協議結果を議事録にまとめることも重要です。
議事録を作成の上、必ず消防担当者に内容確認をお願いしましょう。

年度跨ぎには注意する

消防協議の際は年度跨ぎ、つまり4月を跨いでの協議には注意しましよう。
諸官庁は4月に人事異動することが多いため、担当者が変わる恐れがあります。
3月までは合意済みであった内容が、4月に別の担当者担った途端にその見解が覆ることがあります。
私自身も何度か経験したことがあります。

こればかりはどうしようもありません。
少なくともそれまでの協議内容は前任者と議事録にて合意をとっておくことをオススメします。
消防計画の変更に対して、こちらには非がないことを明確にしましょう。

まとめ

本記事では、建築設計における消防協議の手順と留意点について解説しました。

結論

消防協議に際して十分な準備をして、打合せに臨みましょう。

困ったことや問題点が事前にわかっていれば、消防担当者も相談に乗ってくれます。
きちんと準備しておけば当日の協議に臨みましょう。

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» 参考:簡単な設備計算アプリまとめ

本記事が皆さんの実務や資格勉強の参考になれば幸いです。

» 参考:建築設備士に合格するためのコツと勉強方法【学科は独学、製図は講習会で合格です】

» 参考:一級建築士試験の資格学校4選について解説【おすすめはスタディングとTACです】

以上、建築設計における消防協議の手順と留意点について解説、でした。

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