どんな給水方式があるの?
どれを選んだらいいかわからない
メリット・デメリットが知りたい
今回はこんな疑問にお答えします。
給水方式は4パターンから選びましょう。
建物に給水する方法は大きく4パターンです。
でも自分が設計する建物でどれが適しているかわからない…
という疑問をお持ちの方がいるかと思います。
そこで本記事では給水方式の種類とメリット・デメリットについてまとめました。
計画条件においてどの方式が最適か、という判断で採用する方式は変わります。
よって正直優劣はないです。
本記事を参考に、建築主と要望と建物条件を照らし合わせて、ベストな方式を選んでいただければ幸いです。
給水設備の給水量(受水槽、引込管、給水ポンプ)の決定方法【3分でわかる設備の計算書シリーズ】
今回は「受水槽方式」について解説します。
「水道直結方式」は以下の記事をご確認ください。
給水方式の種類とメリット・デメリットを解説1-水道直結方式編
給水方式の種類とメリット・デメリット
給水方式は大きく水道直結方式と受水槽方式に大別されます。
そこからさらに細分化されて、水道直結直圧方式・水道直結増圧方式・ポンプ直送方式・高置水槽方式の4パターンに分けられます。
各方式のメリット・デメリットをまとめますと以下の表となります。
給水方式比較表
この4パターンのうち、受水槽方式に該当する「ポンプ直送方式」と「高置水槽方式」のパターンについて、各項目に関する詳しい特徴とどのような物件で採用すべきかを紹介します。
ポンプ直送方式
ポンプ直送方式は図に示すように、水道本管から分岐して給水管を引込み、受水槽へ貯水します。
その貯水された水を受水槽から加圧ポンプによって建物内の必要箇所に給水する方式です。
マンションやオフィスビルのような中規模以上の建物では、最も多く採用される方式です。
建物規模が大規模であったとしても、給水引込管は受水槽に貯められる分だけのサイズでよいです。
よって水道本管の許容量の大小に影響を受けにくいです。
給水設備の給水量(受水槽、引込管、給水ポンプ)の決定方法【3分でわかる設備の計算書シリーズ】
また受水槽で一旦配管の繋がりが途絶えるため、水道本管側への逆流等の恐れもありません。
そのため受水槽以降の給水計画は、原則的に水道局のチェック対象とはならず、行政協議も水道直結方式と比べてスムーズ進みます。
この辺が、同規模であっても水道直結増圧方式よりも広く採用される大きな理由だと言えます。
どのような建物に採用するべきか
- 規模 :小規模~大規模
- コスト:中~高価
- その他:例1-設置スペースが確保できる 例2-水道本管が細く、水道直結方式では引き込めない
この方式は、さすがに戸建て住宅ではほとんど採用されませんが、それでも大小さまざまな用途に採用が可です。
設置スペースが余程厳しいという話でない限り、この方式を最初に検討してよいでしょう。
よく比較対象となる水道直結増圧方式は、イニシャルコストと省スペースのメリットはありますが、給水引込管のサイズが大きくなるというデメリットがあります。
給水引込管はサイズが大きくなるほど、加入金と水道料金が高くなりますので、LCCとしては結果的に高くなる恐れがあります。
その辺も踏まえて、まずはポンプ直送方式を検討することをお勧めします。
給水ポンプの揚程計算についての解説【3分でわかる設備の計算書】
水質汚染
受水槽に一旦水を貯留してから必要各所に給水しますので、水質汚染への配慮が必要です。
必要容量に対して少ないと十分に水を供給できなくなります。
しかし反対に過大であっても残留時間が長くなり、水質汚染の危険が増すため注意が必要です。
圧力の安定度
給水圧力は加圧ポンプが担いますので、ほぼ一定に供給が可能です。
ただし中央方式の給湯設備がある場合は、低層と高層とで圧力差が生じてしまうため、
給水圧力は加圧ポンプが担いますので、ほぼ一定に供給が可能です。
ただし中央方式の給湯設備がある場合は、低層と高層とで圧力差が生じてしまうため、低層系統と高層系統で加圧ポンプを分けるなどの配慮が必要です。
BCP:断水時
受水槽に常に水を貯留していますので、残っている分は供給が可能となります。
BCPへの対応が求められる建物では、受水槽方式を採用することが一般的です。
BCPへ配慮が必要な場合は、災害時に何日分の水量を確保する必要があるかも建築主と打ち合わせて、容量を決定してください。
BCP:停電時
加圧ポンプを用いますので原則給水はできませんが、発電機があれば可能です。
BCPへの対応が求められる建物では、原則的に発電機を計画します。
電気設計者に加圧ポンプへの電源供給を見込んでもらいましょう。
省スペース・維持管理の容易さ
受水槽がありますので、受水槽置き場の確保が求められます。
またメンテナンススペースも必要となりますので、それなりのスペースを要します。
設置高さにも制限があり、多くの市町村で2階程度の高さまでとなっています。
早い段階で意匠設計者とスペース調整を行いましょう。
安さ
この方式は受水槽、加圧ポンプやそれらに対する制御があるため、水道直結方式に比べると高価となります。
高置水槽方式
高置水槽方式は図に示すように、水道本管から分岐して給水管を引込み、受水槽へ貯水します。
その貯水された水を揚水ポンプによって高置水槽へ揚水し、以降重力によって建物内の必要箇所に給水する方式です。
特徴としてはポンプ直送方式とほぼ同じですが、揚水ポンプで直接各所に給水するわけではないので、揚水ポンプの制御はよりシンプルで安価に対応できます。
どのような建物に採用するべきか
- 規模 :中規模~大規模
- コスト:高価
- その他:例1-設置スペースが確保できる 例2-BCPへの配慮が求められる
この方式が採用される最も大きな理由はBCP対応にあります。
中規模~大規模でBCP対応が強く求められる場合は、検討すべき方式です。
給水設備の給水量(受水槽、引込管、給水ポンプ)の決定方法【3分でわかる設備の計算書シリーズ】
水質汚染
ポンプ直送方式と同様に受水槽に一旦水を貯留してから必要各所に給水しますので、水質汚染への配慮が必要です。
さらに高置水槽がありますので、より配慮を要する方式です。
圧力の安定度
給水圧力は加圧ポンプが担いますので、ほぼ一定に供給が可能です。
また重力を水圧源として給水しますので、最上階へも給水できるように、高置水槽は十分に高い位置に設ける必要があります。
高さ確保が難しい場合は、高置水槽以降に増圧ポンプが必要になります。
BCP:断水時
ポンプ直送方式と同様に受水槽に常に水を貯留していますので、残っている分は供給が可能となります。
さらに高置水槽分がありますので、BCPに対しては最も有利となる方式です。
BCP:停電時
ポンプ直送方式と同様に原則給水はできませんが、発電機があれば可能です。
少量ではありますが、高置水槽分は重力にて供給できますので、よりBCP対策が可能な方式です。
省スペース・維持管理の容易さ
受水槽に加えて、高置水槽の設置スペースも確保する必要があります。
省スペースの観点からは最も不利と言えます。
さらに高置水槽は屋上に設置しますので、外観に対する配慮も求めらえます。
安さ
揚水ポンプは加圧ポンプに比べて安価ですが、配管長や高置水槽分を加味しますと、最も高価な方式となります。
まとめ
本記事では受水槽方式に該当する「ポンプ直送方式」と「高置水槽方式」の2パターンについてご説明しました。
ポンプ直送方式
- 規模 :小規模~大規模
- コスト:中~高価
- その他:例1-設置スペースが確保できる 例2-水道本管が細く、水道直結方式では引き込めない
高置水槽方式
- 規模 :中規模~大規模
- コスト:高価
- その他:例1-設置スペースが確保できる 例2-BCPへの配慮が求められる
本記事を参考にすれば、ご自身が担当する物件においてどの方式が最適か見えてくると思います。
受水槽方式は、設置スペースが求められ、建築プランに大きく影響します。早期のご検討と調整をおすすめします。
簡単な設備計算アプリも作成しています。ぜひチェックしてください。
本記事が皆さんの実務や資格勉強の参考になれば幸いです。
» 参考:建築設備士に合格するためのコツと勉強方法【学科は独学、製図は講習会で合格です】
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以上、給水方式の種類とメリット・デメリットを解説2-受水槽方式編、でした。
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