設備設計の仕事の流れと業務内容について解説【建設業全体に携われる職業です】

質問・疑問

設備設計ってどんな仕事?
建築業界でどんな立場だろう?
電気設備設計と機械設備設計ってなに?

今回はこんな疑問にお答えします。

結論

建築設計の一角を担い、建設業全体に携われる稀な職業です。

大まかに建築業務のフロー(工程)を大別すると以下のようになります。

建築業務のフロー

  1. 企画
  2. 設計
  3. 施工
  4. 運用
  5. 更新

設備設計は建築業務のフロー①~⑤のすべてに関わる業務範囲が広い職業です。
建設業全体でも、ここまで業務範囲が広い職業は稀です。
その結果、転職においても有利な職種です。
その辺の詳しい内容は以下の記事をご参照ください。
設備設計が異業種・他業種へ転職しやすい理由と転職先の4選

本記事では設備設計とはどのような仕事か、をテーマに解説します。
皆さんの設備設計に興味を持つきっかけになれば幸いです。

目次

設備設計とは

建築設計の種類

設備設計とは建築設計の一角を担う職業です。
建築の設計は大きく以下の3業種にて成り立っています。

建築業務のフロー

  1. 意匠設計 : 建物の外観や内装等の「デザイン」を設計する業種
  2. 構造設計 : 建物の基礎や骨組み等の「構造」を設計する業種
  3. 設備設計 : 建物の室内環境や照明等の「環境」を設計する業種

一般的に「設計」と聞くと上記の意匠設計を連想されます。
しかし実は意匠設計は「設計」の1つであり、「意匠設計」・「構造設計」・「設備設計」で「設計」は成り立っています。

設備設計は建物の利用者が快適に過ごせるように、空気や灯り等の室内環境を計画します。
また価値ある建物を継続的に利用できるように、省エネルギー性やメンテナンス性に配慮して建築設備全般の計画を行います。

わかりやすいイメージとして、建物は良く人体で例えられます。
意匠は外見や体型、構造は骨格や筋肉、そして設備は血管や内臓に相当するイメージです。

設備設計はひと昔前まで、脚光を浴びる業種ではありませんでした。
建物を機能させるためのおまけの設計者みたいな扱いでした。
しかし近年、建物は省エネルギー性能が重要視されるようになりました。
またデジタル化の推進が進み、その大きな対象の一つが建築設備です。
その結果、現在では設備設計も主役級に注目される職業となってきました。

設備設計の仕事の流れ

設備設計の業務

設備設計という仕事の存在は知っていても、その業務の流れについてはあまり知らない方が多いのではないでしょうか。
私も会社に入社する前はそうでした。
何となく仕事内容はイメージできましたが、どのように仕事が進んでいくのかはよくわかっていませんでした。

そこでは本章では設備設計業務の流れについてご説明します。
大きな流れとしては以下となります。

建築業のフローと設備設計の業務内容

STEP
企画段階

設備設計の業務内容企画設計

STEP
設計段階

設備設計の業務内容基本設計

設備設計の業務内容実施設計

STEP
施工段階

設備設計の業務内容工事監理

設備設計の業務内容竣工時の対応

STEP
運用段階

設備設計の業務内容竣工後の対応

STEP
更新段階

設備設計の業務内容改修・建て替え計画の設計

企画段階:企画設計

まず最初のステップは「企画設計」です。
この段階では以下のような計画の大前提となる項目をまとめていきます。

業務内容例

  • 敷地の調査を行い、給水・排水・ガスといったインフラ設備の有無や位置の確認を行う。
  • 建築主がどのような建物を建てたいのかのヒアリングを行う。
  • ヒアリング内容に準じた建築プランの決定と並行して、設備計画を提案・決定する。
  • 決定したプランの大まかなコストを算出する。
    この段階ではあまり作図はせず、概要書や引き込みルート図程度の内容で概算コストを算出する。

設計段階:基本設計

続いてのステップは「基本設計」です。
この段階で計画をより具体化し、設計内容はほぼまとめます。
基本設計段階できちんと計画をまとめないと、後々のステップに大きく影響を及ぼします。
基本設計での作業は以下の通りです。

業務内容例

  • 建築主と各室の使い方等を協議し、より詳細な設備計画をまとめる。
  • 各設備の簡易的な計算書を作成し、大体の機器容量の決定や必要な機械室サイズ等を算出する。
  • 意匠設計と設備スペースを含んだ平面プランの調整を行い、建築と設備計画の整合は取る。
  • 構造設計と地下ピットの高さや梁貫通のルール等の調整を行い、構造と設備計画の整合は取る。
  • 消防局、水道局、下水道局等の諸官庁協議を行い、遵守しなければならない法規を整理する。
  • 確認申請の審査機関と協議を行い、計画内容の大所について確認する。
  • 各種検討内容や協議事項をまとめて、基本設計図や基本計画書を作成する。

設計段階:実施設計

続いてのステップは「実施設計」です。
この段階では基本設計に基づき、さらに具体化させ設計図を完成させます。
この設計図が各種法規に対する申請図書、精算見積の根拠資料、建築主との契約図となります。
実施設計での作業は以下の通りです。

業務内容例

  • 建築主と設計図をまとめる上で、設計内容の最終確認を行う。
  • 具体的な設備ルート図や機器プロットを行い、必要に応じて意匠設計及び構造設計とスペースの詳細な調整を行う。※この調整が可能なのは、実施設計の初期段階まで
  • 建築情報や設備ルート図等に基づき、詳細な計算書を作成し、機器の能力等を決定する。
  • 工事区分や特記事項等も含めた実施設計図を完成させる。
  • 完成した実施設計図にて、確認申請等の各種法規に対する申請を行う。
  • 完成した実施設計図にて、精算見積もりを行う。
  • 実施設計図と精算見積もり内容にて、建築主と契約を結び、一連の設計業務が完了となる。

施工段階:工事監理

続いてのステップは「工事監理」です。
この段階では実施設計図に基づき、工事が行われているかの品質管理を行います。
また例えば病院などの建物用途によっては、工事を進めながらの設計変更が求められる場合があります。
工事監理での作業は以下の通りです。

業務内容例

  • 施工者と打合せを行い、工事の進捗や問題点等の確認、及び指示書の作成を行う。
  • 建築主に工事の進捗状況、施工者との打合せ内容を定期的に報する。
  • 工事箇所の検査、施工状況の写真等により、品質管理を行う。
  • 確認申請の中間検査等の公的検査の手続きと検査立会を行う。
  • 施工計画書や各種工事の施工要領書、設備機器の納入仕様書等を確認する。
  • 空調機やコンセントの位置等を示した総合図をチェックし、建築主に提示する。
  • 設計内容に変更があった場合の変更図の作成、及び必要に応じ、確認申請審査機関に変更図面を提出する。
  • 工事を進めていく中で発生した追加工事費の査定を行う。

施工段階:竣工時の対応

一連の設計・工事の最終ステップは「竣工」です。
各種検査を行い、適合すれば完成引渡しとなります。
竣工での作業は以下の通りです。

業務内容例

  • 建築確認完了検査及び消防検査に立会う。
    建築確認申請書に対して、建物が合法かどうか確認審査機関(または各自治体)が完了検査行い「検査済書」が発行される。
    また消防署により消防設備の検査が行われ、問題がなければ「消防検査同意書」が発行される。
  • 設計検査を行う。
    完成した建物が設計図との相違がないか検査する。
    その際に不適切な箇所があれば、施工者に対して是正指示を行う。
  • 建築主が行う検査に立会う。
    建築主が気が付いた点や要望があれば、施工者に申し伝え、必要に応じ是正指示を行う。

運用段階竣工後の対応

設計・工事完了後のステップに「竣工後の対応」があります。
建物を引き渡したらは、はい終わり、っというわけには行きません
実は竣工後にすべてがうまく行くわけではありません。
現実的には何かしらの不具合が発生するため、そのアフターケア等を行います。
この対応は施工者側だけで済む場合もあります。

業務内容例

  • 竣工直後に不具合が発生した場合、施工者と共に原因を追究し対応する。
  • 近隣とのトラブル等を含めて何かしら問題が発生した場合、施工者と共に対策の検討・提案や必要に応じ是正対応を行う。
  • レイアウト変更等の改修工事の設計依頼があった場合、その計画を建築主とともにまとめる。

改修段階:改修・建て替え計画の設計

最後のステップは「改修・改築計画の設計」があります。
建物はずっと使い続けられるわけではなく、老朽化が進み数十年後に寿命が来ます。
よって建物の老朽化具合に応じて、改修工事や建て替え計画を必要となります。
改修工事は建物の一部を更新、建て替えは建物を一からすべて立て直す、というイメージです。
どちらの計画も設計者が対応する必要があります。
近年は高度成長期以降にできた建物の老朽化がに伴い、この改修段階の設計業務が増えてきています。

業務内容例

  • 建築主と協議し、改修・建て替え計画の立案する。
  • 既存建物や周辺インフラの調査を行い、今回計画に必要な工事種別や計画範囲を明確にする。
  • 以降は「設計段階」~「運用段階」の業務を繰り返し行っていく。

電気設備設計と機械設備設計

電気設備設計と機械設備設計

設備設計の中にもさらに種類があり、それが電気設備設計と機械設備設計です。
各物件において、原則それぞれ担当者が割り振られ、一人で設計することはほとんどありません。
よって1物件における担当者は意匠設計者、構造設計者、電気設備設計者、機械設備設計者の計4名で構成されることが一般的です。

電気設備設計の業務範囲

電気設備設計は、建物の照明のスイッチやコンセント、電源供給計画など、建物の電気に関わる項目全般の設計を行う仕事です。

代表的な工事項目

  1. 受変電設備
  2. 幹線設備
  3. 動力設備
  4. 電灯コンセント設備
  5. 通信設備
  6. 自動火災報知設備
  7. 避雷設備

機械設備設計の業務範囲

機械設備設計は建物の空調や換気、各所への給水計画など、空調設備と衛生設備の設計を行います。

代表的な工事項目

  1. 空調設備
  2. 換気設備
  3. 排煙設備
  4. 自動制御設備
  5. 給排水衛生設備
  6. 消火設備
  7. ガス設備

年収

設備設計の年収

年収は概ね300〜800万円であり、平均年収で約450万円です。
求人ボックス:設備設計の仕事の年収・時給・給料情報
日本の平均年収と比較すると高い傾向にあります。
さらに一級建築士や設備設計一級建築士を取得することで、年収1000万円以上となることも可能です。
» 参考:設備設計一級建築士とはどんな資格か、その解説

私の個人的な考えてとしては、建築設計職に共通して言えることですが、設計職はその職種というよりも所属組織によって年収は大きくわかってきます。
よって上記はあくまで目安です。
ただし私の実感として大きくは外れていない統計です。

設計職は個人事務所を立ち上げることも可能ですので、年収を高める可能性としては無限大です。
加えて設備設計職は人手が足りていませんので、今後は個人事業主としてのビジネスチャンスが高いと言えます。

まとめ

本記事では設備設計の流れと仕事について解説しました。

結論

建築設計の一角を担い、建設業全体に携われる稀な職業です。

設備設計は建物の利用者が快適に過ごせるように、空気や灯り等の室内環境を計画します。
また価値ある建物を継続的に利用できるように、省エネルギー性やメンテナンス性に配慮して建築設備全般の計画を行います。
近年建物は省エネルギー性能が重要視されるようになりました。
その結果、設備設計も主役級に注目される職業となっています。
設備設計職は建築業界のなかで今後も重要性を増していく業種だと言えます。
» 参考:建築設備設計職の需要について

皆さんの設備設計に興味を持つきっかけになっていただけたら幸いです。

他にも資格関連や計算書・アプリなどの記事も作成しています。ぜひチェックしてください。

» 参考:簡単な設備計算アプリまとめ

本記事が皆さんの実務や資格勉強の参考になれば幸いです。

» 参考:建築設備士に合格するためのコツと勉強方法【学科は独学、製図は講習会で合格です】

» 参考:一級建築士試験の資格学校4選について解説【おすすめはスタディングとTACです】

以上、設備設計の仕事の流れと業務内容について解説【建設業全体に携われる職業です】でした。

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