設備系技術者が一級建築士の製図試験に合格するための攻略方法3選について解説

質問・疑問

設備系技術者でも製図試験に合格できるの?
設備系技術者って製図試験で不利だよね?
設備系技術者の製図試験の攻略方法が知りたい

※設備系技術者:本記事では設備設計や設備施工などの設備関連業務の従事者全般を指します。

今回はこんな疑問にお答えします。

結論

設備系技術者の長所を活かすことで合格率は上がります。決して設備は不利ではありません。

一級建築士の製図試験はプランニングと作図を行うため、意匠設計者有利な試験です。
これは間違いないでしょう。

しかし設備系技術者が不利かと言ったら、決してそんなことはありません。

本記事では、私の製図試験での経験に基づいた、合格するための攻略方法3選について解説します。

私はこの攻略方法を実践することで、周りの意匠設計者よりも良いプランニングと作図ができていたという自負があります。(2年目はですけど)

本記事は設備系技術者という観点から述べていますが、その他の職種にも置き換えられる内容です。
設備系ではない方も参考してください。

学科試験についてまとめた記事もありますので、ぜひチェックしてください。
一級建築士学科試験の合格のポイント、難易度や勉強方法について解説

一級建築士試験の資格学校4選について解説【おすすめはスタディングとTACです】

目次

設備系技術者が合格するための攻略方法3選

設備系技術者が合格するための攻略方法3選

では早速、設備系技術者が合格するための攻略方法3選について説明します。
攻略方法3選は以下の通りです。

攻略方法3選
  1. エスキスの高速化
  2. 記述で差別化
  3. 図面に設備的知識を盛り込む

その根拠となる私の経験は後述しています。
そちらも製図試験に臨むうえで参考になりますので、ぜひチェックしてください。

エスキスの高速化

1つ目はエスキスの高速化です。

エスキスの高速化の方法
  1. NGとなる項目がない(ツッコミどころがない)、課題要求を満たしたプランを作る
  2. 原則エスキスは複数案の検討は不要で、1案だけでよい
  3. 課題文に無い余計な配慮やこだわりは排除する

これが最重要な攻略方法です。
製図試験は時間との勝負です。
目安とされる時間配分は以下の通りです。

目安時間

  • エスキス:120分
  • 記述:60分
  • 作図:180分
  • 見直し:30分

この中で1年目の皆さんが一番ネックになってくるのは作図時間180分です。
書けば書くほど作図時間は短縮できますが、練習量が求められます。
限られた学習期間で180分を切ることは難易度が高いです。
となると他の部分の時間を短縮する必要があります。

記述の時間を減らせるか

記述の60分はどうかといいますと、ここは短縮しないことをおすすめします。
図面では表現しきれない内容をアピールする重要なポイントであり、設備系にとって要となります。
周りの合否結果から推測しても、採点者側が記述を重要視していることが伺えます。
仮に記述を書くのが遅い人がいれば、60分以上の時間をかけてもよいぐらいです。

エスキスは短縮の余地がある

そこでエスキスの高速化です。
その方法は”NGとなる項目がない”(ツッコミどころがない)課題文の要求を満たしたプランを作ることです。
製図試験は課題文の要求を満たせているかを評価される試験ですが、要求を100%満たさなければ受からないわけではないんです。

限られた時間で100%を目指すことは難しいです。
課題文の要求に対して、”NG”と判断される個所がなければ合格率は上がります。

例えば”要求室の欠落”は要求を満たせていない明確な項目ですのでNGですが、”動線に配慮する”などは程度問題ですのでOKです。
もちろんできているに越したことはないですよ。

NGとなる事項(減点対象もしくは一発アウト)
・要求室の欠落
・建ぺい率オーバー
・図面相互の不整合

OKとなる事項(程度にもよりますが)
・動線に配慮する
・隣接させる
・要求室の面積が狭い

このように出題者側にNGと判断されない・できないプランを作ることを念頭に、とにかく課題文の要求を満たすようにエスキスをすると高速化が図れます。
課題文の要求を満たすこと意識すればプランの迷いも減っていきます。
原則エスキスは複数案の検討は不要で、1案だけでよいです。
課題文に無い余計な配慮やこだわりは不要です。

実はこの割り切りは、実務が身に染みている意匠設計者には難しいようです。(私の同僚談)
割り切りは、建築設計専門外の職種だからこそ可能な戦術です。
ぜひ皆さんも試してみてください。

受験2年目ではありましたが、私はこの方法でエスキスを行い、40分~90分でエスキスをまとめることができていました。
それでも資格学校での評価は毎回一番良いランク1でした。

記述で差別化

2つ目は設備に関して濃い記載をすることで、記述で差別化を図ることです。

記述で差別化するの方法
  1. 設備の記述で設備専門外の受験者に差をつける
  2. 自分の知識に基づいた自分なりの解答をする

記述は図面の補助的な資料を思われがちですが、大前提として一級建築士試験は受験者が一級建築士として必要な知識を有しているかを試すものです。
その中で記述は、ここでしか評価できない内容が含まれていますのでとても重要です。
資格学校で習ったテンプレートのような解答をするのではなく、自分の知識に基づいた自分なりの解答をすることが合格のカギとなります。

毎年4割程度が設備に関する出題です。
ここで設備技術者の皆さんは、他の受験者に差をつける記述をしてください。

設備は専門外の人からすると取っつきにくい分野です。
そのためこの人は設備を理解できていないんだろうな、と分かる解答をしている人がたくさんいます。
そういった人たちに設備の記述で差をつけることで、合格率が向上します。

設備系技術者以外の方も、この記述部分で自身の知識を生かすことが可能です。
他の受験者に差をつけるきっかけにしてください。

図面に設備的知識を盛り込む

3つ目は図面に設備的知識を盛り込むことです。

図面に設備的知識を盛り込む方法
  1. 適切にDSなどを計画して設備計画を理解できていることを示す
  2. 記述で記載した内容と関連した箇所を意識する
  3. あくまで自身のプランに大きな悪影響がない範囲でよい

図面にPS・EPS、機械室、ドライエリア、天井懐の確保など設備的な知識を盛り込むことで、設備計画を理解できていることをアピールして下さい。
また必ず記述で記載した内容と関連した点でアピールすることを心がけてください。

意匠設計者ですら、実務でもPS・EPSをまったく入れない設計者がいます。
それが製図試験となればより顕著になります。
設備計画がどうなっているか問われてまったく答えられない人は多くいます。

そこで設備系技術者の皆さんは、トイレ周りにPS、大空間にDSを設けるなどして設備計画を理解できていることをアピールして下さい。
実務レベルの整合をとる必要はありません。
あくまで自身のプランに大きな悪影響がない範囲で大丈夫です。

以上が本記事の主題である設備系技術者が合格するための攻略方法3選でした。
これ以降はこの考えに至った根拠となる私の経験を記載しています。
こちらも製図試験に臨むうえで参考になりますので、ぜひチェックしてください。

私の製図試験の経験談

私の製図試験の経験談

参考までに私の製図試験の取組みはどうだったのかについてご説明します。
この経験が攻略方法3選の根拠になっています。

製図試験1年目について

不合格の体験

私は製図試験合格に2年かかっています。
1年目の本試験はどうだったかというと、資格学校で学んだ”きれい”なプランにまとめようと執着してしまい、エスキスが中々まとめることができませんでした。

時間が迫ってきたため見切り発車で記述の要点や作図に移行して、とりあえず一通り完成させました。
動線はぐちゃぐちゃで汚い、図面の書き込み量も少ないようなプランです。
記述も各項目の半分ぐらいしか埋まっていないような内容でした。

資格学校での採点であれば、最低ランクとなるような内容だなと感じました。
試験が終わった段階でこりゃ落ちたな、と悟りましたね。

でもそんな内容でも意外と結果の合格判定はランクⅡだったのです。
試験はランクⅠ~Ⅳまであります。
ランクⅠが合格であり、ランクⅡとは”NG”ではないが合格には至らないという結果です。

周りをリサーチして見えてきたこと

落ちたことは残念でしたが、それ以上になんであの内容でランクⅡなんだろう、ということが疑問でした。
そこで、周りの同僚や同じ資格学校に通っていた人にリサーチしたんです。

そうすると毎回高評価で当日もきれいなプランが書けていたのに落ちている人、反対に私から見てもヘンテコなプランなのに受かっている人がいることが分かりました。

その結果から分かったことは、重要なことはプランのきれいさ・素晴らしさではなく、きちんと課題文の要求を満たすことだということです。

重要なことは課題文の要求を満たすこと

つまりNGと判断されない・できない図面と記述を行うことです。

実はそのきれいなプランなのに落ちた人は、意匠設計者であり、プランのきれいさを優先して要求室を一部省いてしまっていたそうですね。
冷静に考えるとそれでいいわけがないのですが、試験の極限状態だと起こりえるミスです。

私の不合格ながらもランクⅡをもらえた理由は、プランは確かにとても悪かったですが、建ぺい率違反等の致命的なミスは犯してはいなかったことにあると思います。

しかし記述の書き込み量不足等から、課題文の要求に対して十分に応えられていないとみなされ、ランクⅡになったと推測しました。

この推測を踏まえて2年目に臨みました。

1年目の学び
・課題文の要求にこたえたNGではない計画が求められる
・プランのきれいさは最重要事項ではない
・図面や記述の書き込み量が不足してると、合格は難しい

製図試験2年目について

設備は決して不利ではない

時間は十分にありましたので、資格学校の長期コースには入らずに最初は独学で学習を進めていました。
必ず短期コースは受講することを条件に、資格学校で過去に取り扱った課題をいただくことができました。
2年目以降の方は、交渉してみることをおすすめします。

いくつかの課題に取り組んでみて気が付いたことがありました。
それは設備って意外と製図試験で重要視されているんだな、ということでした。
記述では必ず設備のことが聞かれますし、各建物用途に対する設備方式の理解も必要です。
そしてそれらを作図に反映しなければならないことが見えてきました。

設備は決して不利ではないですね。

作図能力向上の限界

作図練習をすることで、設備の私でも2.5~3時間で作図ができるようになってきました。
しかしそこで頭打ちで、それ以上時間短縮は図面が雑になったり、書き忘れが発生するようになりました。
そもそも作図に慣れていない私にはここが限界でした。

また課題の難易度により作図時間が前後するため、より確実に合格するためにはできるだけバッファーとなる見直し時間を多く確保することが必要だと感じました。

エスキスのみ短縮の余地がある

記述はその重要度から時間を削ることは得策ではないと考え、エスキスに着目しました。
エスキスは2時間しっかり考えて、最初は2~3案出してそこから1案に絞っていく、と私は資格学校の講師に教わっていました。

しかし私の場合は複数案作っても、結局最初に出てきた案を採用することが多かったんですね。
これは私が建築設計のプロではないことに起因していると思っています。
建築計画の引き出しが少ないため、課題文の要求に答えながらプランニングしていくと、複数案作ろうと試みても結局代わり映えしない案しか出てこないのです。

特にこだわりもないので代替案がないんですよね。
だったら最初から納得いく1案に絞って、エスキス時間はどんどん短縮する訓練をしてみようと思いました。
この方法が、NGと判断されないプランニングという考えにとてもマッチしました。

とにかく要求を満たそうと、自分なりにプランニングしていくと、迷いがなくなり早くまとまるんですね。
自分が建築設計のプロではないことも、変なこだわりや余計な配慮を排除することができ、反対にメリットとなったと思います。

この方法により私は2時間のエスキスを40~90分で終わらせられるようになりました。
少なくとも60分の見直し時間を確保できるようになりました。

資格学校でも高評価、そして合格

その後私は、1年目の受験者と一緒に短期の講座に通いました。
時間短縮ができても資格学校で低評価であれば本末転倒ですが、毎回高評価をもらえました。
なぜなら最適案ではなくても、課題文の要求を満たしたNGのない(ツッコミどころがない)計画だったからです。

試験当日もエスキスは70分ぐらいで終わらせました。
十分な見直し時間を確保して特に苦戦することなく合格することができました。

2年目の学び
・設備は決して不利ではない
 →製図試験では設備の知識が問われる
 →建築計画は専門外であるため、余計なこだわりや配慮を排除できる
・作図に慣れていないため、作図スピードの向上に限界がある
・エスキスを短縮しても合格に十分なプランニングは可能である

この1年目の経験と2年目の考察と実行から、私は設備系技術者が合格するための攻略方法3選を導いたというわけです。

まとめ

本記事では、私の製図試験での経験に基づいた、合格するための攻略方法3選について解説しました。

攻略方法3選
  1. エスキスの高速化
  2. 記述で差別化
  3. 図面に設備的知識を盛り込む

この攻略方法の根拠となっている経験より得られた学びは以下の通りです。

1年目の学び
 ・課題文の要求に応えたNGではない計画が求められる
 ・プランのきれいさは最重要事項ではない
 ・図面や記述の書き込み量が不足してると、合格は難しい


2年目の学び
 ・設備は決して不利ではない
  →製図試験では設備の知識が問われる
  →建築計画は専門外であるため、余計なこだわりや配慮を排除できる
 ・作図に慣れていないため、作図スピードの向上に限界がある
 ・エスキスを短縮しても合格に十分なプランニングは可能である

本記事は設備系技術者という観点から述べていますが、その他の職種にも置き換えられる内容ですので、設備系ではない方も参考してください。

一級建築士の製図試験は、実は設備系技術者にもアドバンテージがありますので、本記事を参考に自信をもって望んでください。

一級建築士以外の資格勉強の取り組みについても解説していますので、ぜひチェックしてください。

» 参考:建築設備士に合格するためのコツと勉強方法【学科は独学、製図は講習会で合格です】

» 参考:設備設計一級建築士の修了考査通過に向けた学習方法を解説【過去問を入手しよう】

以上、「設備系技術者が一級建築士の製図試験に合格するための攻略方法3選について解説」でした!

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