設備設計一級建築士ってどんな資格だろう?
取得する必要あるかな?
どうやったら取得できるんだろう?
今回はこんな疑問にお答えします。
設備設計一級建築士は、設備設計にとって一級建築士に勝る最上位の資格です。
設備設計一級建築士は、世間ではあまり認知されていません。
しかし一級建築士を取得した人が設備設計の実務を経て初めて受験資格が得られるとても難易度の高い資格です。
設備設計を生業としている方にはぜひ目指していただきたい資格です。
イメージとしては、設備設計スキル + 一級建築士 + 建築設備士 = 設備設計一級建築士、といった具合です。
本記事では設備設計一級建築士がどのような資格か、難易度はどの程度か、年収の相場はいくらかなどについて解説します。
設備設計一級建築士とはどのような資格か
設備設計一級建築士とは設備設計職にとっては一級建築士の上位互換であり、最高峰の資格です。
つまり設備設計職の皆さんが目指すべき資格は設備設計一級建築士です。
資格の範囲としては、階数3以上かつ床面積の合計5,000平方メートル超の建築物の設備設計について、設備設計一級建築士による設備関係規定への適合性の確認を受けることが義務付けられています。
この設備関係規定への適合性の確認がなされずに建築基準法に定める建築確認申請が行われた場合には、その建築確認申請書は受理されないこととなっています。
要するにある一定規模以上の建物は、一級建築士だけでは設計できず、設備設計一級建築士の確認を受けなければ設計は完了しないわけです。
設備設計一級建築士はとても権威性の高い資格だということです。
この制度が創設された当初は当然資格の保有者が少なく、大規模な建物を建てられない事態が生じたため、意匠設計者が受講することもあったそうです。
ただ最近はだいぶ資格保有者が増えてきましたので、そういった人をふるいにかけるため、だいぶ難易度は上がってきてます。
設備設計一級建築士はなぜできたか
設備設計一級建築士ができたきっかけは、姉歯秀次氏が起こした耐震偽装問題です。
この事件を要約すると、姉歯氏が構造計算の結果を改ざんして、建物の建設許可の申請を行っていたんですね。
そしてそれを審査する人たちが不正を見抜けずに、承認してしまったわけです。
当時の仕組みではチェックが抜け落ちやすかったようです。
結果、耐震基準を満たさない建物たちが出来上がっていまいました。
これは構造設計に関わる偽装事件でしたが、同様の偽装が設備設計においても起こり得たため、構造設計一級建築士と同時に平成18年12月改正建築士法により、設備設計一級建築士制度が創設されました。
この制度により、大規模な建物等では偽装ができないように設備(構造)設計一級建築士によるチェック体制が作られました。
設備設計一級建築士の取得方法
設備設計一級建築士証を取得するには、一級建築士として5年以上設備設計の業務に従事した後、国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う講習の課程を修了することとされています。
設備設計一級建築士取得までの流れは以下の通りです。
受験資格を得るだけでも道のりがとても長いです。
» 参考:設備設計一級建築士の受験資格、申込手順や試験概要について解説
設備設計一級建築士の講習の体制
設備設計一級建築士の講習は、受講者の「試験の通過状況」と「保有する資格」により、5つに別れます。
また申込区分により受けなければならない講習の数と試験(修了考査)の内容が変わってきます。
» 参考:設備設計一級建築士講習の講義概要や受講のポイントについて解説【勝負は後半の4時間です】
» 参考:設備設計一級建築士の修了考査に合格する方法ついて解説【適切に対策することが重要です】
申込区分の概要は以下の通りです。
申込区分Ⅰ 全科目
対象者:保有する資格が「1級建築士」のみで受講する方です。
講習 :全科目が対象で、3日間の講習を受けます。
試験 :「法適合確認」と「設計製図」の両方です。
評価 :× 講習は最も長く、試験は難易度が最も高いです。
申込区分Ⅱ 法適合確認のみ
対象者:過去2年間の講習で「設計製図」のみで合格した方です。
講習 :法規関連の科目が対象で、1日間の講習を受けます。
試験 :「法適合確認」の1つのみです。
評価 :〇 だいぶ負荷は小さいですが、2年以内という期限付きです。
申込区分Ⅲ 設計製図のみ
対象者:過去2年間の講習で「法適合確認」のみで合格した方です。
講習 :設計関連の科目が対象で、2日間の講習を受けます。
試験 :「設計製図」の1つのみです。
評価 :△ 申込区分Ⅱより講習が少し重いですね。また同様に2年以内という期限付きです。
申込区分Ⅳ 建築設備士
対象者:保有する資格が「1級建築士」かつ 「建築設備士」で受講する方です。
講習 :法規関連の科目が対象で、1日間の講習を受けます。
試験 :「法適合確認」の1つのみです。
評価 :◎ 他と比べてハードルが低いです。
申込区分Ⅴ 全科目免除
対象者:過去2年間の講習で「法適合確認」に合格され、かつ 「建築設備士」の方です。
講習 :免除
試験 :免除
評価 :◎ 講習、試験は完了しており、証明書申請のみの方対象です。現実的にはほとんどこの区分に該当する方はおりません。
申込区分Ⅰは講習・試験ともにボリュームが盛りだくさんで大変です。
申込区分Ⅱ・申込区分Ⅲは、申込区分Ⅰで過去に「法適合確認」と「設計製図」のいずれかに合格した方用です。
これら申込区分Ⅰ〜Ⅲはおすすめできません。
私の先輩は私が合格した年に申込区分Ⅰで受験しましたが不合格であり、2020年現在も資格取得には至れていません。
申込区分Ⅳは講習が1日、試験も「法適合確認」の法規のみと、他と比べてだいぶハードルが低いです。
冒頭で述べた一級建築士 + 建築設備士 = 設備設計一級建築士がここにつながります。
この一級建築士と建築設備士は、我々設備設計者にとっては設備設計一級建築士の試験は圧倒的な難易度の低さで望むための言わば特急券なのです。
設備設計一級建築士を受験するまでの5年間で建築設備士も取ってしまいましょう。
申込区分Ⅳが絶対にオススメです。
設備設計一級建築士の難易度
以下が実受講者数、修了者数、修了率の実績データです。
この表からも申込区分Ⅰが難しいことが読み取れます。
また申込区分Ⅲの合格率も再受験の割に高くありません。
これは設計製図が難しいためです。
私は製図試験は受けていませんので問題のみ確認しましたが、合格率が示すように、相当対策が必要そうだなという印象がありました。
学習難易度の観点からも申込区分Ⅳの「法適合確認」のみで受験することをおすすめします。
» 参考:設備設計一級建築士の学習方法や合格に向けたコツについて解説【過去問を入手しよう】
設備設計一級建築士の年収・市場価値
設備設計一級建築士の年収は700〜1000万円ぐらいが相場です。
役職や社内評価によってはさらに高い年収を目指せます。
転職求人サイトを見ても設備設計一級建築士の求人は高収入な傾向にあります。
設備設計一級建築士を取得することで市場価値は向上することが読み取れます。
まとめ
本記事では設備設計一級建築士がどのような資格か、難易度はどの程度か、年収の相場はいくらかなどについて解説しました。
- 設備設計一級建築士は、設備設計にとって一級建築士に勝る最上位の資格である
- 設備設計一級建築士ができたきっかけは、姉歯秀次氏が起こした耐震偽装問題
- 受験資格を得るだけでも道のりがとても長い
- 設備設計一級建築士の講習は申込区分Ⅳがオススメ
- 設備設計一級建築士の年収は700〜1000万円ぐらいであり、さらに高い年収を目指すことも可能
設備設計を生業としている方にはぜひ目指していただきたい資格です。
イメージとしては、設備設計スキル + 一級建築士 + 建築設備士 = 設備設計一級建築士、といった具合です。
皆さんもこの記事をきっかけに設備設計一級建築士取得に向けたアクションを起こしていただけると幸いです。
» 参考:設備設計一級建築士の学習方法や合格に向けたコツについて解説【過去問を入手しよう】
以上、「設備設計一級建築士とはどのような資格か、難易度や年収について解説」でした!
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