建築設備士の資格概要と取得するべき3つの理由【建築設備系は皆取ろう】

質問・疑問

建築設備士ってどんな資格?
建築設備士を取得するメリットって何?
どんな職種が取得する必要あるの?

今回はこんな疑問にお答えします。

結論

建築設備士は建築設備系職種の方の全員が取得するべき資格です。

建築設備系でどの職種に就いているかによって、取得するべき資格は若干異なります。
例えば設備設計であれば設備設計一級建築士、設備工事であれば1級管工事施工管理技士といった具合です。
しかし建築設備士の資格に限って言えば、職種に関わらず設備系全員が取得するべき資格だと言えます。
本記事では建築設備士の資格概要と建築設備士を取得するべき3つの理由について解説します。

建築設備士の勉強方法のノウハウは以下にまとめてありますので、合わせてご確認ください。

建築設備士に合格するためのコツと勉強方法【学科は独学、製図は講習会で合格です】

目次

建築設備士概要

建築設備士概要

まずは簡単に建築設備士の資格と試験の概要についてご説明します。
すでにご存じの方は、次の章の「建築設備士を取るべき3つの理由」まで読み飛ばしてください。

建築設備士とは

建築設備士は、建築設備全般に関する知識及び技能を有し、建築士に対して、高度化・複雑化した建築設備の設計・工事監理に関する適切なアドバイスを行える資格者です。
建築設備に係る設計・工事監理について建築設備士の意見を聴いた場合、建築確認申請書等においてその旨を明らかにしなければなりません。
また、建築士事務所の開設者が建築主から設計等の委託を受けたときに、建築主に交付すべき書面に記載する事項として、業務に従事する建築設備士の氏名が規定されています。

要約すると建築設備士は建築士に対する設備のサポート役といったポジションです。
設計や工事行為に対して直接的に必要となるわけではない、というちょっと特殊な資格です。

受験資格

受験資格には大きく「学歴+実務」、「資格+実務」、「実務のみ」の3種類あります。
実務のみでも受験資格を得ることができますので、未経験者でも建築設備士を目指すことが可能です

» 参考:建築の未経験者が建築設計者になる方法【CADオペレーターからステップアップ】

受験資格をまとめた表は以下のとおりです。

学歴・資格等建築設備に関する実務経験年数
最終卒業学校又は資格課程


+

(一)大学(新制大学、旧制大学)正規の建築、機械、電気又はこれらと同等と認められる類似の課程卒業後
2年以上
(二)短期大学、高等専門学校、旧専門学校卒業後
4年以上
(三)高等学校、旧中等学校卒業後
6年以上
(四)専修学校(専門課程)
(修業年限が4年以上、かつ、120単位以上を修了した者に限る)
卒業後
2年以上
イに揚げる専修学校(専門課程)以外の専修学校(専門課程) (修業年限が2年以上、かつ、60単位以上を修了した者に限る)卒業後
4年以上
イ・ロに揚げる専修学校(専門課程)以外の専修学校(専門課程)卒業後
6年以上
(五)職業能力開発総合大学校又は職業能力開発大学校(総合課程、応用課程又は長期課程)卒業後
2年以上
職業訓練大学校(長期指導員訓練課程又は長期課程)
(六)職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校又は職業能力開発短期大学校(特定専門課程又は専門課程)卒業後
4年以上
職業訓練短期大学校(特別高等訓練課程、専門訓練課程又は専門課程)
(七)高等学校を卒業した後、職業能力開発校、職業能力開発促進センター又は障害者職業能力開発校(普通課程)修了後
6年以上
高等学校を卒業した後、職業訓練施設(職業訓練短期大学校を除く) (高等訓練課程、普通訓練課程又は普通課程)


+

(八)一級建築士2年以上
(資格取得の前後を問わず、 通算の実務経験年数)
一級電気工事施工管理技士
一級管工事施工管理技士
空気調和・衛生工学会設備士
第1種、第2種又は第3種電気主任技術者



(九)建築設備に関する実務の経験のみの者9年以上
(十)区分(一)から(九)までと同等以上の知識及び技能を有すると認められる者

試験内容

試験はマークシートによる学科の第一次試験と記述と作図の第二次試験によって構成されます。
電気・衛生・空調の全般的な知識が試される試験内容となっています。
学科の第一次試験では、建築一般知識、法規、建築設備に関する問題が出題されます。

一級建築士の試験と比べますと、建築関連と法規関連は簡単に、設備関連は難しくなっているイメージです。
記述と作図の第二次試験は、建築系の知識は求められず、電気・衛生・空調に関する基本設計レベルの知識や作図能力が試されます。

一級建築士と比較すると…

  • 建築・法規関連:建築設備士試験 < 一級建築士試験
  • 電気・設備関連:建築設備士試験 > 一級建築士試験

試験内容をまとめた表は以下のとおりです。

試験の区分出題形式出題科目出題数出題内容
第一次試験
(学科)
四肢択一 建築一般知識27建築計画、環境工学、構造力学、建築一般構造、建築材料及び建築施工
四肢択一建築法規18建築士法、建築基準法その他の関係法規
四肢択一建築設備60建築設備設計計画及び建築設備施工
第二次試験
(設計製図)
記述建築設備基本計画11建築設備に係る基本計画の作成
製図建築設備
基本設計製図
5空調・換気設備、給排水衛生設備又は電気設備のうち、受験者の選択する一つの建築設備に係る設計製図の作成

試験内容の変更

建築設備士の試験内容は、2020年に変更が加わりました。
理由は昨今の省エネ技術を始めとした建築設備に関する重要度が高まっているためです。
このことにより、建築設備士の試験もより適切に判定できるように試験方法が見直されました。
試験の内容が変わったわけではなく、出題問題の比重が変更となっています。
より設備に関する知識が問われる問題数の配分となりました。
変更内容は以下のとおりです。

項目出題変更前変更後
第一次試験建築一般知識27問30問
建築法規18問20問
建築設備60問50問
第二次試験計算問題1問1問
系統図又は単線図1問1問
平面図計画1問0問
設備書室の配置計画図1問0問
空調設備の平面図1問1問
衛生設備の平面図1問1問
電気設備の平面図1問1問

試験の難易度

合格率は13%〜20%となります。
2020年の合格率が下がっている理由は試験方法の変更のためだと予想されます。
2020年の変更に伴い難易度は高くなった印象ですが、それだけ建築設備士資格の価値が上がったと言えます。

合格実績は以下のとおりです。

第一次試験第二次試験総合
受験者数合格者数合格率受験者数合格者数合格率受験者数合格率
2016
(平成28年)
2,677
73727.5%
1,071601
56.1%
3,046
19.7%

2017
(平成29年)
2,907
841
28.9%
1,112
580
52.2%
3,205
18.1%

2018
(平成30)年
2,983
93031.2%
1,242
646
52.0%
3,335
19.4%

2019
(令和元年)
2,800
74926.8%
1,123
61054.3%
3,19819.1%

2020
(令和2年)
2,526
650
25.7%
916
379
41.4%
2,811
13.5%

建築設備士を取るべき3つの理由

建築設備士のメリット

資格取得の主な目的は、その資格がないと仕事ができないためです。
例えば消防設備を設置したい場合は消防設備士が必要となりますし、建物の建設許可を得るためには建築士の資格が必要となります。

それに対して建築設備士はちょっと特殊で、この資格がないと仕事ができない、ということがありません。
それでも、私は設備系職種に従事している方、これから設備系の仕事に就こうとしている方の全員に建築設備士の取得をおすすめします。

その理由は以下の3つにあります。

建築設備士を取るべき3つの理由
  1. 設備全般の実務レベルの知識が得られる
  2. 設備系の転職に有利
  3. 他の上位資格へと繋がる

設備全般の実務レベルの知識が得られる

資格勉強を通して、その分野の知識が得られるということは、どの資格であっても共通して言えることです。
しかし資格で得られる知識は、入門レベルのもので実務で通用するものではない、というケースが多くあります。

例えば一級建築士は建築に関する全般的に知識を得ることはできます。
しかし残念ながら現実的に意匠・構造・設備設計のいずれも実務レベルの内容とは言えません。
一級建築士は学習範囲が膨大であるため、どうしても広く浅くになってしまうわけです。

それに対してこの建築設備士で得られる電気・衛生・空調の設備全般に関する知識は、より専門的であり、実務レベルと言えます。
2次試験の出題内容は設備設計の実務でいう所の基本設計レベルです。
なかなか歯ごたえがある内容ですよね。
設備系の業種に関わる方であれば、建築設備士の資格勉強を通して、明日からでも使える知識を身に着けることができます。

» 参考:建築設備士の勉強方法はこちら

設備系の転職に有利

建築設備士の資格を保有していると転職にもとても有利になります。
以下は設備設計の転職に関する記事ですが、転職先は多くあることを解説しています。

» 参考:設備設計の転職について

これは決して設備設計に限った話ではなく、他の設備系職種にも共通する話です。
そして建築設備士の資格はこの転職の容易さと幅広さを更に増してくれます

転職サイトも覗いてみましょう。

リクナビNEXT

数多くの設備系職種の求人を確認できますが、その多くの求める人材に「建築設備士を有していること」とあります。
転職の際に本人の市場価値を決める大きな要因は資格と実績の2つです。
建築設備士を取ればこの内の資格はクリアできます。

建築設備士を取得した上で所属組織で十分な実績を積むことができていれば、設備系のどんな企業、どんな仕事にも就職するチャンスが得られます

他の上位資格へと繋がる

建築系最上位の資格は、一級建築士、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士などが該当します。
設備系で一級建築士を持っていれば、今後職に困ることはまずないでしょう。
しかし一級建築や設備設計一級建築士は、その試験内容ももちろんですが、前提となる受験資格を得ることがとても難しいです。

建設業従事者が一級建築士の資格を取得すべき理由5選について解説

そこで建築設備士の資格が有効になります。
建築設備士を持っていれば建築学科を出ていなくても一級建築士の受験資格を得ることができます
私の周りでも電気系学科卒の方が建築設備士を取って最終的に一級建築に合格した例もあります。
設備設計一級建築士に関しても建築設備士を持っているだけで、試験の難易度が約半分まで下がります。

» 参考:設備設計一級建築士とはどんな資格か、その解説

しかも建築設備士は実務経験のみでも受験資格が得られる数少ない資格です。
建築設備士の入口は誰にでも開かれており、出口では建築系最上位の資格に繋がるわけです
取得しない手はないでしょう。

まとめ

本記事では建築設備士の資格概要と建築設備士を取得するべき3つの理由について解説しました。

結論

建築設備士は建築設備系職種の方の全員が取得するべき資格です。

建築設備士に関する概要まとめは以下のとおりです。

建築設備士概要まとめ
  1. 受験資格は未経験者でも得ることが可能である
  2. 試験内容は電気・衛生・空調の全般的な知識が試される
  3. 設備の重要度が高まった事により、試験方法に変更が加わった
  4. 合格率は13%〜20%である

建築設備士を取得するべき3つの理由以下のとおりです。

建築設備士を取るべき3つの理由
  1. 設備全般の実務レベルの知識が得られる
  2. 設備系の転職にとても有利である
  3. 一級建築士などの上位資格へと繋がる

建築設備士の資格は、職種に関わらず設備系全員が取得するべき資格だと言えます。
皆さんに価値をもたらしますので、何年かかっても構いません。
本記事を参考にぜひ建築設備士の資格取得を目指してみてください。

建築設備士の勉強方法のノウハウは以下にまとめてありますので、合わせてご確認ください。

建築設備士に合格するためのコツと勉強方法【学科は独学、製図は講習会で合格です】

以上、「建築設備士の資格概要と取得するべき3つの理由【建築設備系は皆取ろう】」でした!

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