設備設計になるとどんなメリットがあるの?
スキルアップはできるだろうか?
デメリットもあるでしょ?
今回はこんな疑問にお答えします。
設備設計職は進むも退くもメリットが多い業種ですので、是非飛び込んでみてください。
このページをのぞきにきたってことは、皆さんは設備設計職に興味があるわけですね。
ありがとうございます。
設備設計は今後需要が拡大するおすすめの職業です。
設備設計はプロジェクトの初期段階から関わっていきますので、その仕事と知識範囲は多岐にわたります。
また近年は環境負荷低減やデジタル技術導入が建設業界では求められています。
これらの課題に最も親和性の高い設計職が設備設計です。
そのため設備設計は就職することで得られるメリットがとても多い職業です。
しかしいいことばかりかと言えばそうではなく、デメリットも存在します。
そこで本記事では設備設計のメリットとデメリットについて解説します。
メリットとデメリットについて知っておくことで、設備設計への理解がより深まります。
就労のミスマッチも事前に避けることができます。
ぜひ最後まで読み進めてください。
設備設計のメリット
では早速設備設計のメリットから解説していきます。
主なメリットは以下の5つです。
設備設計のメリット5選
- 作図スキルの習得
- 計算・解析スキルの習得
- 様々な資格の習得
- 将来性が高い
- 自由な働き方ができる
設備設計は仕事を通して一生モノのスキルが身につきます。
建設業界全体に言える話ですが、建築に関わる技術の根本は昔から大きく変わっていません。
つまり一度身に着けたスキルは、そう簡単に風化していきません。
今後技術革新は進んでいきますが、根本的な技術は変わらないはずです。
設備設計職として一生モノのスキルを身に着ければ、長年にわたってこれらのメリットはなくなることがありません。
では順にご紹介します。
作図スキルの習得
設計者の主な仕事は、建築主のニーズから建物の設計図を作ることです。
その中で設備設計は、建築主のニーズをくみ取って設備図を作成する職業です。
設計図面を作成する際には、専門の作図ツールを使用します。
作図ツールの使い方を同時に覚えられる点も大きなメリットです。
CADスキルの習得
作図技法として現在ではCADソフトが用いられます。
CADソフトとはパソコンで2次元の図面を作るツールのことです。
CADは専門の資格講座があるぐらい特殊な技能です。
設備設計職はそのCADを仕事として学ぶことができます。
しかもそのCADソフトは設備専門CADであり、もうこの時点で唯一無二の存在になれます。
設計事務所や建設会社によって採用するCADソフトは異なりますが、以下のソフトがメジャーどころです。
- AutoCAD
- Revit
- CADWe’ll Tfas
- Rebro
BIMスキルの習得
さらに今後はCADからBIMに移行していきます。
大手CADソフトメーカーであるAUTODESK社によるとBIMとは以下のように解説されています。
BIMとは、Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略称で、コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うためのソリューションであり、また、それにより変化する建築の新しいワークフローです。
なんとなくイメージはわきますか?
要約すると、図面は2次元から3次元にして、その3次元図面を使って建築業務のすべてを完結させよう、って話です。
え?設計がすごい大変になるじゃん!、って思いませんか?
そうなんです、大変なんですよ。
そんなわけで国交省も含めて、建築も土木も各社急ピッチで試行錯誤している最中なんです。
設備設計職はそんな業界の根幹を担うBIMの中心に位置することになります。
ちなみにこれは意匠設計・構造設計も同じ話です。
どの設計職も重要度が今まで以上に増していきます。
計算・解析スキルの習得
計算スキルの習得
設備図は、例えば細い給水管一つでもきちんと計算に基づいて決めます。
よって常に計算とは隣り合わせに設計を進めていきます。
設備設計にとって設備計算書を作るということはとても大事な仕事の一つです。
設備計算を行わないと結論が出せない事項も多く存在しています。
その設備計算スキルを身に着けることができれば、とても稀有な存在となります。
余談ですが、設備計算書についても記事を作成していますので、是非チェックしてください。
解析スキルの習得
また設備設計職は解析スキルも身につきます。
解析と聞くと研究開発系の職種のイメージがあるかもしれませんが、実は設備設計職は結構解析が求められます。
1つ目が設計初期段階における環境解析です。
設計初期段階はざっくりとした環境解析を行いたい場合が多く、また時間がなくスピード感が求められます。
そのため、外部委託や研究開発職に気流解析や温熱環境解析などを依頼しているお金も時間もかけられません。
そういったときに設備設計職が自ら温熱環境シミュレーションソフトを用いて解析します。
2つ目が建築主に建物を引き渡した後に、残念なことに不具合が発生する場合があります。
そのような場合も、その不具合原因の追及のために解析を行います。
例えば原因不明の結露が発生した場合は、温湿度計などを現地に設置させていただき、その情報に基づいて原因を解析します。
原因追及による解析は建築主にも迷惑をかけていますので、あまり胸を張れるものではないですが、確実にスキルは身につきます。
おしりに火がついている状態ですから嫌でもきちんとスキルアップできます。
これらの理由から、設備設計は計算と解析スキルを習得できます。
私の友人はこのスキルを生かして、ソフトウェア開発会社に転職しました。
設備設計は全く異なる業種への転職も可能という、とても珍しい職業です。
プログラミングスキルの習得もおすすめ
また近年はプログラミングスキルの習得にも着目されています。
プログラミングスキルがあると、回帰分析など詳細な検証が容易に可能となり、より品質の高い建築環境を提供できるようになります。
私も最近プログラミングの勉強中ですが、解析の幅が今までと比べ物にならないぐらい広がりました。
私のおすすめ言語はPythonです。解析機能に優れた言語であり、AIを作る機械学習などの最新技術にも用いられる言語です。
興味がある方はぜひプログラミングについても調べてみてください。
様々な資格の習得
設備職は仕事の範囲が広く、その都合で多くの資格を習得機会があります。
設備設計職も同様で、一級建築士、建築設備士、消防設備士など様々な資格を取得できます。
また所属会社や経歴次第では、一級管工事施工管理技士など工事系の資格も取得できる可能性があります。
多くの資格を取得することで、たくさんの知識が得られます。
それだけではなく、資格により権威性が上がり建築主からの信頼も格段に上がります。
例えばお客さんに同じことを説明しても、一級建築士が言ったことかor無資格者が言ったことか、では残念ながら一級建築士の発言のほうが圧倒的に納得してもらえます。
現実は残酷ですが、それが事実です。
その中でも、設備設計職でしか取得できない資格があります。
それが設備設計一級建築士です。
一級建築士を取得後5年間設備設計業務を行うと、そこで初めて受験資格を得られます。
なかなかの難易度ですよね。
しかも設備設計職にしか取れないんです。
一定規模以上の建物の設備計画は、設備設計一級建築士でないと設計してはいけないことが、法律で決まっています。
法的にも存在意義が担保されていますので、一生涯需要がある資格となります。
設備設計一級建築士取得まで道のりが厳しい資格ですが、取得できたらもう最強です。
将来性が高い
設備設計職は、非常に将来性が高い職種です。
その理由を「需要」と「転職」の観点でご説明します。
需要が高まり続ける
2050年カーボンニュートラルを宣言しました。もはや環境対策は経済の制約ではなく、社会経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換と力強い成長を生み出す、その鍵となるものです。まずは、政府が環境投資で大胆な一歩を踏み出します。
これは首相官邸HP内にある一文です。
日本政府はもちろんのこと、世界的にも環境対策は最重要課題の一つとなっています。
建設業界も環境対策に対する大きな使命を背負っており、近年では建築物省エネ法が施行されました。
それ以外にも、風力発電施設の建設やCO2削減を目的とした木造建築が注目を集めたりと、「環境」が建築業界で大きなキーワードとなっています。
建築業界の「環境」の中心にいる職業の1つが設備設計職です。
建築の設備計画を1から考えることが設備設計の仕事の1つです。
よって設備設計者の存在は、今後も重要度がどんどん増していきます。
ここ10年だけでも社内での立ち位置が、良い意味で変わってきたなという実感があります。
以前は設計の中でもおまけのような立ち位置でした。
しかし最近はプロジェクトの中心にいることが多くなりました。
この傾向は今後も継続することは間違いないです。
転職に有利
設備設計は転職に有利な職業です。
なぜ設備設計職は転職がしやすいかというと、設備の立場から一連の建築業務のほぼすべての工程に関わる数少ない業種だからです。
大きく建築業務の工程を大別すると以下のようになります。
このすべての工程に関わるということは、色々な他業種に深く関わりながら仕事を進めることになりますので、自然と他業種への理解や知識を得ることができます。
結果として設備設計職は多くの職業へ転職がしやすいことになります。
自由な働き方ができる
建築業界は労働時間の上限が規制されるようになり、2024年4月より施行されます。
それに伴い残業時間の短縮目的から働き方の見直しが進められています。
その一環で時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働く形態であるテレワークが推進されています。
私も新型コロナの影響をきっかけに、2020年ごろから在宅勤務を開始しました。
在宅勤務を通して気が付きましたが、Wi-Fi環境等の最低限のツールが整っていれば、意外と不自由はありません。
結果、設備設計職の業務内容を改めて思い返してみると、設備設計職はこの場所を選ばない働き方が適しています。
その理由を以下にでご説明します。
- 設備設計が扱うデータは軽い
- 毎日出社の必要がある業務ではない
- 設備設計は外出が多い
- 人手不足から時間の効率化が求められる
設備設計が扱うデータは軽い
意匠設計はパースやイラストレーターのようなデザイン系のツールを頻繁に使うため、モバイルタイプのノートパソコンでは仕事が難しいです。
構造設計も同様で、構造計算の解析は処理能力の高いパソコンでないと進められないため、出先でノートパソコン作業、というわけにはいきません。
それに対して設備設計はエクセルで対応できるレベルの計算書だったり、ノートパソコンで十分操作できる容量のCADしか、日常的には扱いません。
ガッツリCADによる作図などを行いたい場合は、モニター等も必要ですが、それは在宅勤務で問題ありません。
原則的にモバイルタイプのノートパソコンスペックで十分仕事ができます。
毎日出社の必要がある業務ではない
毎日決まった時間に打合せが必要ということはありませんので、毎日出社する必要も実はありません。
自分が担当するプロジェクトにおいて、メンバーと情報共有や調整方法を工夫すれば、大丈夫です。
ただし全く対面での打合せが不要かというと、中々それでは難しい部分があります。
よって週何回か出社、それ以外は在宅勤務やその他の場所で仕事を行う、というところが落としどころかもしれません。
現状私は毎週2~3日在宅、それ以外は出社するというワークスタイルをとっています。
設備設計は外出が多い
設備設計は、お客さんとの打合せ、諸官庁との協議、現場の監理業務等で会社から外出する機会が多い職種です。
よって場所を選ばないことを前提とした働き方は、その隙間時間を有効に活用できますので、設備設計にはとても適しています。
実際のところ、設備設計はわざわざ出社すると作業時間が確保できないことが多いため、否応なく外出先でも業務を処理する必要がすでにありました。
つまり元から働き場所を選ばない仕事の仕方をしていたわけですね。
人手不足から時間の効率化が求められる
建築業界全体に言えることですが、その中でも特に設備設計は人手不足です。
その結果、1人当たりの複数物件が多い職種です。
この状況に加えて、更に建築業界は今後労働時間の上限が規制される予定です。
そうすると、各物件における検討量が不足に陥りがちになります。
というかすでに検討不足な状態に陥っています。
この傾向は、抜本的な改革がない限り、今後も変わることはありません。
そこでテレワークによる時間の効率化を図ることが有効です。
家や近所のカフェで働くことで、無駄な通勤時間を省けます。
どこででも働ける装備が整っていれば、打合せの空き時間を有効活用できます。
デメリット
設備設計職のデメリットは大きく分けて「時間不足」と「モチベーションの維持」です。
時間不足
どうしても作業・検討時間が不足してしまい、結果的に品質が低下を招いてしまいます。
なぜ時間不足が発生してしまうかの理由を以下にまとめました。
- 人手不足である(主に電気設備設計)
- 設計スケジュールに余裕がない
- 設備の不具合対応が必要(主に機械設備設計)
人手不足である(主に電気設備設計)
設備設計は人手不足ですので、一人が抱える仕事量が多くなりがちです。
1人で複数物件を担当することが当たり前になっています。
設備設計には機械設備設計と電気設備設計がいますが、特に電気設備設計が人手不足となっています。
主な理由は、電気系学科の学生にとって建築業界がメジャーな就職先ではないことに起因しています。
それでも2024年から建設業界でも上限規制を守る必要が生じます。
過度な残業は許されなくなりますので、労働環境は良い方向に向かっています。
最近の労働環境については以下の記事で解説しています。
よろしければぜひ一読ください。
設備設計とは激務な職業か?労働環境について解説【実際はそうでもないです】
設計スケジュールに余裕がない
設備設計は意匠図を貰ってから、詳細な作図を行います。
しかし図面の納期は意匠設計と一緒ですので、どうしても作図にかけられる時間は少なくなります。
意匠設計職もできるだけ早く図面をまとめようと努力してくれています。
ただどうしても短い設計期間や建築主のニーズをまとめる過程で、時間を要してしまいます。
これはどうしようもない話ですので、意匠設計職のことは全く責められません。
そして結果として、短期集中での作図となるケースが多いです。
しかし近年は建築物省エネ法が施行されるなどの影響で、設備計画に十分時間を割かなければそもそも設計を完了させられない状況になってきました。
業界全体で設備に対する関心や理解が増してきており、この設計スケジュールについても改善に向かっている印象があります。
設備の不具合対応が必要(主に機械設備設計)
設備設計者は建物を引き渡した後の設備の不具合対応も求められます。
例えば設備の不具合とは、設備機器よる騒音、ガラスや外壁周りの結露等が該当します。
特に機械設備設計関連が多いです。
建築主やその他近隣に迷惑を掛けている状態ですので、対応は早急かつ確実に行う必要があります。
当然ながら不具合が是正されるまで対応が求められますので、簡単な業務ではありません。
加えて並行して他の物件の設計業務もありますので、長引くと肉体的にも精神的にも非常につらい状況に追い込まれます。
この状況を避ける最善策は、設計段階で十分な建築主との協議、計算・検証や事例調査を行うことで、不具合が起きにくい設計と工事監理を行うことです。
設計者として当たり前のことを確実に行うってことですね。
簡単に言ってますが、私自身も胸を張ってできているとは言えません。
建物の使われ方等、様々な事項を予測して設計する必要があります。
設備設計者にとってこれがとても難しい作業となります。
モチベーションの維持
仕事を楽しめないとしんどい
どの仕事にも共通する話ですが、設備設計の仕事を楽しめないとしんどいです。
辞めたくなります。
当たり前のことをいうな、って感じですよね笑
でも設備設計職はその傾向が高いと思います。
なぜならやるべき仕事内容が作図、計算、協議、現調、申請書類作成などなど業務が多岐にわたります。
あれこれ色々とやることがありますので、それらが楽しくないとしんどくて仕方ないです。
単純作業であれば、楽しめなくてもきちんと給料さえもらえていれば納得できると思います。
しかし設備設計は仕事内容が色々あるうえに、それぞれ学習も必要ですので、そうは割り切れないんですよね。
でも大丈夫です。
業務が多岐にわたる、ってことは楽しみを見出すきっかけはたくさんあるということです。
きっと設備設計職に何かしらの興味を持つきっかけは得られます。
さらに万が一設備設計職がつまらない、辞めたいと思ってもOKです。
なぜなら設備設計職は転職に有利だからです。
興味がないな、と思ったら自身が頑張れそうな業種に転職しましょう。
ただしその場合は、できれば自身で設備設計業務を1物件担当してから転職することをおすすめします。
1物件も担当しないと、設備設計の本質みたいなものは見えてきませんし、次の業種で設備設計の経験も十分に生かせません。
設備設計職は進むも退くもメリットが多い業種ですので、是非飛び込んでみてください。
まとめ
本記事では、設備設計になるメリットとデメリットについて解説しました。
設備設計職は進むも退くもメリットが多い業種ですので、是非飛び込んでみてください。
主なメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
- 作図スキルの習得
- 計算・解析スキルの習得
- 様々な資格の習得
- 将来性が高い
- 自由な働き方ができる
デメリット
- 人手不足である(主に電気設備設計)
- 設計スケジュールに余裕がない
- 設備の不具合対応が必要(主に機械設備設計)
- 仕事を楽しめないとしんどい
設備設計は、デメリットは存在しますが、それを踏まえてもメリットがとても大きい職業です。
設備設計はスキルアップが可能で将来性がある、とても価値がある職業です。
この記事を参考に、設備設計を皆さんの就職や転職の選択肢に入れていただければ幸いです。
他にも簡単な設備計算アプリ資格の取り組み方等に関するページも作っています。ぜひチェックしてください。
» 参考:建築設備士に合格するためのコツと勉強方法【学科は独学、製図は講習会で合格です】
» 参考:一級建築士試験の資格学校4選について解説【おすすめはスタディングとTACです】
以上、設備設計のメリットとデメリットについて解説【就職して得られるメリットが多い職業です】でした。
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